全管連2023年4月 区分所有法の改正に関する要望書

2023.04.11 行政との関わり

区分所有法の改正に関する要望書

法務省民事局 御中

令和5年4月11日
NPO法人全国マンション管理組合連合会
会長 畑島 義昭

〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-26-2
松浦ビル 6階

はじめに

1. NPO法人全国マンション管理組合連合会について

全国マンション管理組合連合会(全管連)は、全国各地の管理組合団体を会員とする組織で、現在、北は北海道から南は沖縄まで19団体で構成されています。
1986年4月、7団体/564 管理組合・12万戸で「全国マンション管理組合団体連絡会議準備会」の名称で設立しました。

1983年5月に成立した区分所有法の改正過程で、各管理組合団体の間で連絡組織を作る話が具体化し、3年後の1986年4月に京都で設立総会が開かれました。

2022年9月現在の会員数は、19団体/2,733管理組合・251,528戸です。全管連は 、各団体間の経験交流・情報交換によって管理組合団体の活動レベルの向上を図ることや行政に対する政策提言、意見表明などを行うことなどを通じて、マンションの良好な住環境の形成に寄与することを目的に活動しています。

2. 本要望書の目的

現在開催されております、法制審議会区分所有法制部会(以下「法制審」といいます。)には、当連合会からも代表者が委員として参加させていただいており、法制審の中で意見を述べさせていただいております。

もっとも、法制審での議論には時間に限りがあることなどから、これまで当連合会として、実務上抱えている問題点、問題意思を十分に伝えきれておりませんでした。

これから中間試案が発表され、その後のパブリックコメントの手続も用意されているかと思いますが、本要望書は、法制審による中間試案の発表に先立ち、法制審においてこれまで十分に議論されていないように思われる点について、当連合会が中間試案において取り上げていただきたいと考えている論点を示し、それを中間試案において論点として取り込んでいただけるよう要望するものです。

当連合会は、今後、法制審などを通じて意見を述べる予定ではありますが、審議が想像より早く進んでいるため、取り急ぎ、中間試案において取り上げていただきたい点につき、要望を述べさせていただきます。

第1 区分所有者の適正管理義務について

マンションは、社会的資産です。区分所有者や管理組合は、管理において社会的責任を負います。マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な指針においても、マンションの社会的影響が指摘されており、マンションを社会的資産としてとらえるべきことが指摘されていること、マンション管理適正化法5条において管理組合及び区分所有者の努力義務が規定されていることも、その趣旨をあらわしたものといえます。

このような観点から、法制審において議論されている「区分所有者の責務」について考えると、積極的にその意義を認識し規定を設けるべきであると考えます。もっとも、法制審においては、「区分所有者の責務」を努力義務として規定することを想定しているようですが、努力義務としてしまうと、区分所有者が、法的義務ではないと考えてしまい、管理に積極的に関わらなくなってしまう恐れがあります。

そこで 、区分所有者相互間において、区分所有建物を適正に管理する義務を「法的義務」として負うことを中間試案において取り上げることを要望いたします。

また、さらに進んで、上記のとおり、マンションが社会的資産であるととらえて、区分所有者は、社会的にも区分所有建物を適正に管理すべき義務を負うと考えるべきです。この区分所有者の社会的責任は、法制審において議論することではなく、国土交通省の方で議論されるべきものであるかもしれませんが、区分所有者が社会的な責任を負うべきであるということも意識して、法制審の議論が進められることを切に希望いたします。

第2 第三者管理の規制について

現在、管理業者による第三者管理者方式が広がりを見せつつあります。いま広がりを見せつつある第三者管理者方式は、理事会を組織からなくした上で、管理業者が第三者管理者に就任するという仕組みです。

そして、第三者管理者は、管理委託を受ける管理業者として管理委託契約を締結 します。このときに、問題になるのは、管理業者が第三者管理者として管理組合の代理人となり、他方で、管理業者は管理業者自身として、管理委託契約を締結するため、利益相反(自己契約)が生じるということです。また、大規模修繕工事を、当該管理業者に発注することになれば、同じように利益相反が生じることになります(大規模修繕工事の場合には請負代金が高額なのでより問題が大きい)。

現在、第三者管理方式を進める管理業者には、理事会をなくし、総会による意思決定にすることで、手間を減らせるので、管理委託費を減額できるということを売りにして、管理委託の公告を打っている例さえあります。

理論的には、総会の承認が得られれば「本人の同意」があるとして、利益相反をクリアできるということになるのかもしれませんが(もっともこのことについても果たして本当にそうなのか、という問題もあると思います)、一般論として、素人集団である管理組合の総会が十分に管理者の監督権能を果たすとはいいがたく、管理者の利益相反やお手盛りを規制することが十分にできないと考えられます。

当連合会としては、そもそも理事会をなくしたうえでの第三者管理者方式自体も問題視しておりますが、法制審において区分所有法の改正として行える対策・対応として、次のことが考えられますので、中間試案に盛り込んでいただくことを要望いたします。

すなわち、管理組合法人においては、監事を必置機関としていますが 、法人化していない管理組合においても、第三者(区分所有者以外の者)が管理者になる場合には、監事を必置機関として、監査権能を強化すべきです。

なお、国土交通省においては、行政法上の規律を設けて、第三者管理者に就任できる管理業者の特別の登録(資格)制度や、理事会を撤廃して管理会社が管理者に就任する場合には、専門家である弁護士、公認会計士 、税理士、マンション管理士等を監事に就任させるべき義務を負わせるという規制を設けることを検討すべきと考えております。

第3 権利能力なき社団である3条団体名義での登記について

法制審において、管理組合法人による専有部分や隣接敷地の購入について検討されており、当連合会においても、そのような事例が実際にあることを把握しており、制度化する必要性 があると考えております。

もっとも、現行法では、管理組合が専有部分や隣接敷地を購入するには、法人化しなければならず、これが管理組合にとっては負担となっている。

すなわち、専有部分や隣接敷地を購入するために法人化した後、管理組合は、毎年あるいは隔年くらいの頻度で、理事長が変わるたびに代表者の変更登記手続を取らなければならなくなっている。この負担が管理組合にとっては大きく、そもそも法人化のハードルになっている。

また、法人化すると、法人税が賦課されることになり、免除される地域もあるものの、全国一律に免除とはなっておらず、法人税の負担も法人化のハードルになっている。

そこで、法人化せずとも権利能力なき社団である管理組合のままで不動産登記ができる制度を検討することを要望いたします。例えば、名古屋市などが行っている管理組合の管理状況の届出制度と合わせて制度を作り、同届出がされた 場合には、管理組合を「法人とみなす」として、権利能力なき社団である 管理組合が登記名義人になれる制度を作れいか、中間試案までに取り上げていただくよう要望いたします。

第4 管理組合法人を非法人に戻す手続について

管理組合が、滞納管理費の回収のために滞納者区分所有者の区分所有権の競売手続を進める際に、権利能力なき社団である管理組合が債権者となって手続を進めると、代表者の個人名での差押え登記となってしまうことなどから(管理者が当事者として手続を進めた場合にも理事長である管理者の個人名がやはり差押え登記に表現されてしまう)、当該手続のためだけに、管理組合法人にするケースがあり、そのようなケースでは手続終了後に、権利能力なき社団である管理組合に戻りたいという要望があります。

また、特に平成14年の区分所有法改正以降、法人化した方がよいと考えて、法人化したものの、代表者の変更登記の負担や法人税の負担の問題から非法人化したいという要望があります。

加えて、今後、役員のなり手不足から、(管理組合における監督体制を整備した上で)管理者を第三者に任せることも想定されますが、管理組合法人の場合には、管理者を置くことができず、管理組合法人の理事に法人など団体が就任できるかどうか現行法上では判然としませんので、管理組合法人から、権利能力なき社団である管理組合に戻した上で、第三者管理を導入する要望が出てくるものと考えられます。

現行法では 、管理組合法人が 、権利能力なき社団である 管理組合に戻る場合には、区分所有法第55条以下の厳格な清算手続を取らなければなりません。例えば、区分所有法第55条の7第1項による2か月以内の3回の公告手続による債権者に対する催告や、同法第56条の2に基づく裁判所による監督など、厳格な手続が想定されています。

区分所有法47条5項の「管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる」の逆のパターンの規定はありませんか ら、管理組合法人 が、権利能力なき社団である管理組合に戻る場合には、やはり、上記の清算手続をとる必要がある、ということになるのだと思われます。

しかし、管理組合法人が、権利能力なき社団である管理組合に戻る場合には、従来の法人から同一性をもって非法人になるだけですから、この場合の手続を簡略化してもよいのではないかと考えます。

そこで、少なくとも、権利能力なき社団である管理組合に戻り、団体が存続する場合には、「管理組合法人における集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、その後に存続する団体につき効力を生ずる」旨の規定を設けるべきであると考えます。

このような規定を置けば、債務が法的に当然に権利能力なき社団に引き継がれるので、解散公告等債権者保護の手続は不要になるし、裁判所の監督なども不要になるのではないかと考えます。この点につき、中間試案に盛り込んでいただきたく要望します。

第5 管理費等債権の優先化について

管理費等債権を先取特権が認められますが、無剰余取消になってしまうことから、最終的には区分所有法59条に基づく競売手続がとられる例が多くなっている。

管理組合の現場で通常、管理費等債権を登記(3条団体の管理組合は、管理組合名で登記できない)していないため、どうしても 抵当権(債権者は当然ながら登記している)には劣後してしまうので、実質的に競売による債権回収が不能となってしまいます。そこで、区分所有法の法改正によって、法律上、管理費等債権が、抵当権の被担保債権に優先するとすべきであると考えます。

管理費等は、管理組合の運営のための基礎財産であるから、その支払義務は区分所有者の基本的な義務です。また、抵当権の目的となる区分所有権の価値を維持しているのは、管理費・修繕積立金です。したがって、管理費等債権を、抵当権の被担保債権に優先させるべきであると考えます。

そこで、管理費等債権が、抵当権の被担保債権に優先して回収されるという改正案を中間試案において取り上げていただきたく要望します。

第6 管理費等債権の放棄について

管理の現場では、滞納管理費等の回収をする際に、遅延損害金を免除したり、弁護士費用等違約金を免除する例があります。また、管理費等回収のための競売手続を進めたものの、滞納管理費等が高額であるために、競落人が現れないような場合には、管理費等元本を免除する例も見られます。

しかしながら、現行法では、管理費等債権の免除ができるかどうかが明らかではありません。
そこで、中間試案において、管理費等債権の免除の問題を取り上げていただくよう要望します。

第7 一棟リノベーションを積極的に検討について

住宅エリアとしては需要の高い都心部において、二世代目の住み繋ぎの際に、一棟リノベーション(リノベーションは言葉として確立されていませんが・スケルトンインフィルもあるなど)の需要があると思われます。

いまの新築マンションは価格が高いのでリノベーションをして住み繋ぐ需要が高いと感じていま す。しかし、一棟リノベーションは現行法上、可決要件がはっきりしていないので(したがって全員合意と位置付けられる)、各戸リフォームで対応しているのが実務の現状です。

しかし、各戸リフォームを行う際には、通常の専有部分のリフォームを超えたものをやってしまっている例もあり(具体的にはコンクリートを斫るなどの工事を含むことをやっている例もある)、このような工事はそもそも工事を行ってよいかという問題もあるし、騒音の問題も生じます。また、工事が共用部分に影響を及ぼすとして、管理組合がそもそもリフォームを認めない例もあります。

また、各戸リフォームは当然ながら共用部分の更新を含むものではありません。
そこで、一棟リノベーションができるのであれば、共用部分を含めたリフォームを柔軟に全体的に行うことができ、騒音問題や管理組合の承認の問題をクリアできるため、積極的に導入を検討すべきであると考えます。

なお、一棟リノベーションの需要のあるマンションで、建替えが進められるかといえば、既存不適格により同規模のマン ションを建てられなかったり、追加負担として各自2000万 円~3000万円のコストがかかるので、建替えが進められない例が多くあります。そこで、一棟リノベーションであれば費用負担を建替えよりも少なくして進められる可能性があるので、この問題もクリアできる可能性があります。

中間試案の前提として、一棟リノベーションにかかる費用の程度を調査いただき、一棟リノベーションの実効性についての情報を反映させた中間試案としていただきたく要望いたします。

第8 区分所有建物の中心が「居住」用のマンションであることを重視した改正の必要性ついて

区分所有法はマンションに限らず、区分所有建物一般を規律している法律ですが、我が国の区分所有建物の大多数は「居住」用であると思われ、かつ、それが、区分所有建物が絡む政策面においても中心的地位を占めているものと思われます。

しかしながら、区分所有建物一般を規律する法律であることなどから、区分所有法3条の目的の範囲が狭く解される傾向があり、管理組合が、コミュニティや居住環境のような居住者団体たる自治会的な活動をすることが制約されてしまう場面が多々見られます。

区分所有建物は「居住」用の建物の法を規律する重要法令であるということを意識の中心におき、管理組合の「目的」に関する改正の議論を行っていただきたいと要望します。中間試案を含め今後の改正の議論の中で、「目的」を狭く解する方向での議論については慎重に対応していただくよう要望いたします。

すなわち、管理組合のソフト面の充実がハード面の適正化につながること、「まち」全体の中でマンションの共用部分や敷地と「まち」とのつながりがあること(共用部分や敷地が公道などの延長線上に位置づけられている面もある。

外壁など共用部分の安全性は無視できないし、共用廊下も居住者のみが利用するのではなく戸建ての敷地内の扱いとは異なるし、敷地が公開空地になっていればそれは「まち」の一部であるなど。)、管理組合と町内会・自治会の関係性が無視できないこと、管理組合 による高齢者の見守りや災害時の対応も社会的に重要視されていること、管理組合が関わるコミュニティマネジメントの事例があることなどから、マンションそれ自体や管理組合の社会的な役割を踏まえると、管理組合の果たす役割が(狭い意味での)共用部分のハード面の管理のみに限定されるという立場は狭すぎることから、管理組合の「できること」の範囲を広げるために、行政法によって、管理組合の権能の範囲を整える(場合によっては広げる)立法の提案をすることを検討しております。

(例えば、マンション管理適正化法とは別に、「マンション管理組合法」を作り、「できること」を広げていくという対応もあり得ると考えている。)(なお、私法が予定していない権能を行政法が与える例としては、マンション建替え円滑化法による建物敷地売却や団地分割の制度がある)。

以上

【お問い合わせ先】
NPO法人 福岡マンション 管理組合連合会(福管連)畑島義昭
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